「いちご白書」をもう一度 バンバン

バンバンの数少ないヒット曲で、作詞作曲はグループの手によるものではなく、荒井由実である。

「いちご白書」は、1968年4月、遊園地を軍事関連施設に建て直すことを発端に始まった、コロンビア大学の学園闘争を下地にした青春映画だ。

ちょっとした好奇心で学生運動に身を投じた主人公と活動家の女子大学生との恋愛もので、ジェームズ・クーネンの体験記を元にしている。

僕は当時在籍していた大学の学園祭でこの映画を観た。

機動隊による学生強制排除行動へ発展する物語は、その排除行動の最中、機動隊に拘束される女子学生を救うべく主人公が人の渦の中へダイブするシーンで終わる(と思ったが・・・)。

トップモーションのエンディングに「サークルゲーム」が流れ、僕は直に席を立てなかったことを覚えている。

その「いちご白書」をモチーフに、荒井由実は曲を書いた。

おそらく学生運動などとは無縁だろうし、初期の頃は、盛んにプチブル・商業主義と非難され続けた。

「社会に対する反抗」や「愛」を歌っていた日本のフォークは、学生運動の衰退と同じくして、四畳半私小説の世界に迷い込んでしまう。

「君」と「僕」が主人公で、決してハッピーではない生活につつましい幸せを見つけては涙をさそう、そんな歌になり下がって行った。

荒井由実は、そのフォークソングに「時代の流れ」を認識させるべく、この曲を書き上げる。

社会に反抗しながら、結局はその社会で生きて行かざるを得ない活動家に、髪を切り不精髭をそったその姿を自嘲させ、結局「若かっただけなんだ」と言わせてしまう。

僕は、何度この曲を聞いても懐かしさがよみがえり、しかし直にその思いは「苦い思い出」へと変質してしまう。

忘れていた青春の傷が、実は存在を隠せず隠蔽されていることに改めて気付いてしまうからだ。

その傷の存在は今でもハッキリと確認できるのに、ガラス越しに見るだけで決して触れることが出来ない。

バンバンはフォークグループだった。

フォークソングでは鳴かず飛ばずだった彼らは、ニューミュージックの第一人者荒井由実の手によって、瞬く間にヒットチャートを駆け昇ってしまう。

反抗する若者は消え、フォークソングの時代が終わった気がした。

2003/06/04(初校)

2022/02/16(追補)

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